うのレポ

狩猟の現場のリアルを体験

長崎空港から車で約1時間半のところに位置する波佐見町。
周りは山と畑ばかりで、しばらくコンビニやスーパーも見かけないような場所が最初の目的地でした。
まず驚いたのが罠の設置されている場所が民家のすぐそばだったこと。
猪が山に食べるものが少なくなり、人里に下りていることが原因だと猟師さんが言っていました。
実際に止め刺しの現場に立ち会い。最初にどこに刺せばいかに猪に負担をかけることなくスムーズな血抜きに繋がるかの確認。
そして、速やかにとどめを刺す。
「奪ってしまう命、せめて苦痛が無いようにしてあげたい」と猟師さんは語ります。
現場は初めて見る光景に重い空気が流れていましたが、獲物を獲って役場への証明写真を撮る猟師さんの顔は使命感なのか達成感からなのかとても誇らしく映っていました。
そこから2つ目の現場へ。1か所目とは違い気性の荒い猪が箱罠で捕獲されていました。
先ほどと違って、暴れる猪は止め刺しを出来る態勢にするのも一苦労。2人掛かりで動きを止めました。
刃を刺した後、血が大量に出ている間も威嚇をやめることなく暴れる猪に圧倒されました。
正確な時間は測っていないのでわかりませんが1分間くらいは威嚇し続けていたと思います。
生きることへの執着を目の当たりにし、生き物を頂くという事を強く感じる瞬間でした。

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途方もない作業の先に美味しく安全なジビエはある

軽トラに2頭の猪を積み、2つある自社加工場の一つ「tracks波佐見ジビエ工房」へ。
積む前に凍らせた電解水でおなかを冷やし体温と外気温で肉が焼けるのを防いでいました。
到着してからは当社で定められた基準に則ったチェック。
次に毛抜作業。お湯をかけると毛穴が開き、スルスルと毛が抜け落ちていきました。
ここでは高温のお湯を使うので肉の品質劣化を防ぐため迅速に作業が進められました。
続いて関節をほぐしてたまった血を摘出、内臓を外して枝肉の状態にします。
波佐見ではここまでの作業を体験し、移動。
続いて二つ目、福岡の糸島にある「tracks糸島ジビエ工房」へ。
施設の案内から始まり実際の搬入経路など、高品質のジビエを提供している施設の実態を学びました。
ここでの実習は主に熟成まで進んだ猪の「皮剥」と「解体」、更に食用への「精肉」まで行いました。
これらの作業自体は店舗でも体験済みでしたが、とにかくかなりの量を解体。
これは一店舗だけでは行えないのでとても大きな経験値になりました。
スライサーを使いかなりの量を切りだしたのにも関わらず、トレーに並べ測ってみるとたったの3パック分。
途方もない作業。tracksスタッフの日々の努力を感じざるを得ませんでした(笑)

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美味しいだけじゃないジビエの奥深さ

最後は皆で地元の産直野菜と共に猪の雌雄・個体の大きさによる味の違いを体験するためのBBQ。
小さい個体は、味わいに欠けるがしっとりとした柔らかさが特徴。
大きい雄は歯ごたえと旨みがしっかり。
動物は雌が美味しいという概念が自分にもありましたが、この日食べたものでは雄の方が好みでした。
ジビエの個体による味の違いを改めて実感することができました。
それから近隣の農家さんへ。tracksでは『残渣』を近隣農家の方に引き取ってもらい堆肥とするのです。
『残渣』とは、加工の途中で基準に満たなかったり食用にはならない部分、内臓や切り落とした部分など。
それが畑を育て、次の命を作る。
食用部分以外も全てを有効活用することが、奪ってしまった動物へのせめてもの報い。
ここでもまた、命について考えさせられました。
獣害被害の現場、それらと奮闘する猟師さんをはじめとする地域の人々、命との向き合い方。
今回の体験を通し、当たり前にあると思っていたジビエの現実を知りました。
ただ美味しいだけじゃないジビエの奥深さ。写真や映像だけではここまでは感じられない。
この経験を生かし、お客様に自分たちを通した追体験をしてもらえるような、そんな価値を商品と共に提供していきたいです。

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